
手仕事から生まれる灯り、飛松灯器
夕陽を再現するような、柔らかく温かみのある灯りで、空間を演出してくれる磁器の照明を手がける飛松灯器。
この心惹かれる灯りは、ガラスの成分が絶妙に配合された磁器からもれる光と、飛松さんが何度も何度も成型に試行錯誤を繰り返したことにより生まれました。
店頭で一目惚れしてくださる方も多い飛松灯器さんの照明、今後STORESでもお取り扱いさせていただくことになりました。石膏型を作る過程から完成まで、お一人の手から生まれる作品たち。今回は先駆けて、その照明ができるまでについて、すこしご紹介させていただきます。

磁器土による鋳込み製法をメインにした陶磁器作家 飛松弘隆氏が「飛松灯器」として制作活動しているブランド、飛松灯器。
テーブルウェアだけではなく、インテリアとしてのセラミックの可能性に着目し、照明(ランプシェードなど)の制作も手掛けています。
大正〜昭和期、蛍光灯の登場により衰退したミルクガラス製の量産型電灯傘に惹かれ、その文化的価値観を更新していくという考えのもと、現代の暮らしを再び照らしだす照明を模索。磁器独特の光の濃淡が現れる「finシリーズ」や、石膏型の境界線"バリ"を残したシンプルな「odd lineシリーズ」などのシェードを発表。
制作場である古い一軒家を改装した工房では、年1回(不定期)のオープンスタジオを開催しています。

飛松灯器の照明を一から手がける陶磁器作家、飛松弘隆氏。
1980年佐賀県生まれ、東京在住。
多摩美術大学工芸科陶プログラム在学中に、型による立体造形の経験を活かし、鋳込み型の技法による器の制作に着手。卒業後、陶芸家の樋口健彦氏や小川待子氏の助手等を経て独立。
「飛松灯器 tobimatsu TOKI」の屋号で、磁器の光を通す性質に着目し、透光性を調整した磁土によるランプシェードを制作。

他にはない絶妙な形をつくりたいという想いから、石膏型はもちろん、石膏型を作るための原型もご自身の手でつくられています。
石膏の粉を水で溶き、攪拌(かくはん)してできた石膏の塊をろくろで成型していきます。石膏はすぐに固まってしまうため、短時間での成型が必要になります。
焼成の際に、生地が柔らかくなり重力でへこみ変形するものもあるため、へこみ具合も計算して石膏型を製作しています。

原料には泥漿(でいしょう)といわれる、磁器の粘土に水をいれ、トロトロの液体にしたものを使用。
作品に合わせて配合を変え、水分は最低限にとどめて原料の泥の硬さを微調整します。
湿度や気温によっても泥漿の硬さが変化するため、季節によって配合を調整する繊細な作業が求められます。

泥漿(でいしょう)を石膏型に流し込み、数分置くと、泥漿の中の水分を石膏型が吸い、吸うと同時に泥漿の中の磁土の粒子が内壁に着き、層になっていきます。
季節や泥漿の状態などによって層のでき方は異なるため、泥漿を流し入れてからの時間は日々調整が必要になります。
時間をかけて乾燥させ、生地が収縮することで石膏型との間に隙間ができ、自然とはがれます。石膏型の切れ目でバリ(突起物)が本体にできるのは、鋳込みならではの表情です。

古い一軒家を改装した工房内にある電気窯で焼成(しょうせい)を行います。
照明シェードは約1200度の電気窯で焼成しますが、その焼く際の温度が重要で、1200度以上で焼いてしまうとガラスの成分が溶け過ぎ形が崩れてしまいます。温度が低すぎても、磁器が焼き締まらず透け感が変わってしまうため、配合によって、温度や焼き時間を調整しています。
当初は約1年間、試作をつくり、試行錯誤を繰り返した今の製法にいたりましたが、それでも100%成功するわけではなく、それでもそうしないと作れない形と透け感のランプシェードは全ての工程において絶妙なバランスをとって作られているのです。

こうして、たくさんの工程を経てやっと完成するのです。
一つの照明が出来上がるまでの作業の量、かかる時間は想像以上で、ひとつひとつすべてこだわり抜いて作られていることが分かります。
ミルクガラス製のランプシェードに惹かれ、光を通す磁土を見つけたことがランプシェード作りに繋がり、潰えた文化を継承し発展させた、そんな背景と同じ様にどこか懐かしさと同時に新しさも感じます。
じっと眺めていたくなるようなフォルムの美しさと、柔らかく温かみのある灯り。
明かりを灯したときの特有の夕方の時間のようなオレンジ色の光がおうちの中に「昼」と「夜」の間の「夕日」の時間を作り、寝るまでの時間もゆったりくつろげる空間にしてくれます。
また、灯していないときの真っ白な焼き締めの磁器の姿も美しく、模様が際立ちます。
1日の中でもいろんな表情を見せてくれる飛松灯器の照明。
STORESでのお取り扱いまで、もう少々お待ちくださいませ。